【経験者が語るSaaSスタートアップ転職の気づき #2】

「世の中から紛争裁判をなくす」を志として掲げ、企業の契約をマネジメントする国内初のSaaSプロダクト「ホームズクラウド」でリーガルテック(法律×IT)の概念を覆し、躍進をつづける株式会社Holmes。

 

今回は同社のCEO室室長 酒井貴徳(さかい たかのり)さんに、SaaSスタートアップにおける企業の志やミッション、カルチャーの重要性、そしてそれらを社内に根付かせるための取り組みについて伺いました。

 

前職では弁護士として、国内最大手の弁護士事務所に所属していた酒井さんが、Holmesに入社して大きく変わったのが、ミッション・カルチャーに対する認識だったそうです。

 

(目次)
最初は「絵に描いた餅」だと思っていた
組織もプロダクトもミッションに紐づいている
カルチャーを体現する『WINパーティー』
おわりに

最初は「絵に描いた餅」だと思っていた


前職では存在しなかった概念

私はHolmesに転職するまでの約9年間、企業法務専門の弁護士としてキャリアを積んできました。

法律の世界からビジネスの世界へ、しかもスタートアップということもあり、入社当初は良い意味でも悪い意味でも驚くことばかりでした。スピード感、失敗に対する考え方…。数え上げれば切りはありませんが、なかでも大きく認識を変えられたのが、企業の志、そして「ミッション(企業の使命)」と「カルチャー(行動規範・行動指針)」の重要性です。

もちろん前職の弁護士事務所にも理念や使命と呼ばれているものはありましたが、一年に一度耳にするかどうかという程度で、日々の業務において意識するかというとそんなことはありませんでした。

そのため転職前は、巷でどれだけ「スタートアップはミッションやカルチャーが大事!」と叫ばれているのを聞いても、まったく腹落ち感はなかったんです。言い方は悪いかもしれませんが、絵に描いた餅というか。

ところが、Holmesに入社してそれほど日が経たないうちに、ガラッと認識が変わってしまったんです。「一番大切なのは志、ミッション、カルチャーだな」と。

 

業務や意思決定の〈拠り所〉

自分なりの分析ですが、そのように考えるように至った根拠は大きく2つあります。それは、スタートアップならではの環境とSaaSプロダクトの特性です。弁護士の組織や業務の在り方と比べてみるとよくわかります。


まず、弁護士の仕事は間違いが許されません。必ずしも正解は一つとは限りませんが、あらゆる判断や意思決定には「法律」という絶対的な土台が存在します。そして、法律事務所は個人事業主の集まりとも言われているとおり、チームとしてではなく、個人としての成果(売上・クオリティ・稼働時間)が重視されます。企業でいうところのマネージャーという役割もなく、あるとしても、クオリティ・コントロールやマイクロマネジメントの側面が強いんです。

他方、SaaSスタートアップは、そもそも何が正解かすらわからない世界で戦っています。今日の正解は明日の不正解、なんてことも日常茶飯事です。そんななか、MVP(Minimum Viable Product=実用最小限の商品)を考えられないスピードでリリースしながら、日々変化する顧客のニーズを捉えてしなやかに変化していくことが求められます。時間をかけて正解のプロダクトをリリースするという考えは通用しません。会社の方針はどんどん変わりますし、それに合わせてメンバー一人ひとりの役割も変化していく必要があります。

このように、プロダクトや組織、顧客など、自分たちを取り巻くすべてのものが目まぐるしく変わるからこそ、変わらないもの、日々の業務や意思決定の際に一人ひとりの〈拠り所〉となるものが必要です。それが、志・ミッション・カルチャーです。逆にいうと、志やミッション、カルチャーがなければ、陸地の見えない嵐の大海原を、海図なしで航海するようなものなんです。


組織もプロダクトもミッションに紐づいている


意識と徹底

Holmesは、「権利義務が自然と実現される仕組みをつくる」というミッションを掲げています。そうした仕組みを構築することで、「世の中から紛争裁判をなくす」という私たちの志を成し遂げられると考えているからです。

とはいえ現実は、目先のKPIにばかり目が行ってしまい、志やミッションを忘れてしまうという事態にしばしば陥ります。営業やマーケティング担当がそうなってしまうと、顧客や世の中にプロダクトの正しい価値が伝わらなくなってしまいます。人事の場合だと、評価や採用の基準がズレてしまうでしょう。だからこそ、志やミッションがメンバー一人ひとりの行動に紐づくよう、会社としても私個人としても、日々さまざまな工夫や努力を行っています。

「紐づく」と言えば、プロダクトについても同様です。私が「ホームズクラウド」について理解を深めていくなかで感動したのは、その隅々にまで志とミッションが紐づいていることでした。ホームズクラウドは、ただの契約に関するプロダクトではありません。「権利義務が自然と実現される仕組みをつくる」というミッションを実現するための〈契約マネジメントシステム〉なんです。

契約マネジメントという言葉は聞きなれないかもしれませんが、簡単に説明すると、①契約プロセスの構築と②契約管理の2つに分けられます。

一般に、「契約業務は法務の仕事」と考えられがちです。しかし、Holmesのマーケチームがまとめた定量分析をみれば、その認識が間違っていることがわかります。法務だけではなく、事業部も経理・総務・人事も契約と無縁ではいられません。

契約は、一つの企業あるいは事業が生まれる前から終わるまでのライフサイクルのなかで、さまざまな関連契約と紐づき、さらに、さまざまな部署のメンバーがさまざまな関連業務の受け渡しを行いながら進んでいきます。しかし、それほど重要かつ複雑なものでありながら、現実には、契約プロセスを適切に分析・統合・管理できている会社は、弁護士時代から見たことがありません。営業、会計、人事とITを利用したプロセス化が進むなかで、契約業務だけは取り残されてしまっています。プロセス化ができていない結果、過去の契約の管理もままならないのが現状です。

ホームズクラウドは、このような現実を変えられる可能性を秘めたプロダクトであり、「権利義務が自然と実現する」状態に一歩近づくための強力な武器になると確信しています。

 

ミッションの翻訳家として

ただ、先ほども申し上げたように、その世界観に対する理解度がバラバラだと、営業やマーケティング活動において価値が正しく伝わらないことや、メッセージがブレてしまうことがあります。

なので最近はもっぱらミッションの翻訳家として、社内での周知徹底に取り組んでいるんです。

「Holmesは世の中のどんな課題を解決する企業なのか」、「『ホームズクラウド』はなんのために存在するのか」、「契約マネジメントとはどういう意味か」、「なぜそれが新しいのか」……。

言葉だけで伝わないときは図解も交えて、何度もメンバーとセッションを重ねています。1on1、あるいはチーム全員に対して。自分自身がブレていないか、ときにはCEOの笹原に壁打ち相手になってもらいながら。


カルチャーを体現する『WINパーティー』

普段は大人しい社員が……

Holmesのカルチャーはいくつかありますが、とくに大切にしているのが、「OKR(目標にたいする主要な結果)の意識」と「徹底的な承認」です。承認とは、平たく言うと褒めること。どちらも仕事の成果、数字に直結するところがポイントです。

とはいえ、こちらもミッション同様、壁に貼ったり暗唱したりするだけでは、本当の意味で一人ひとりに浸透することはありません。そこで、Holmesでは2週間に1回、これらのカルチャーを体現するための社内イベントをおこなっているんです。

『WINパーティー』という名前で、各社員が仕事の成果や進捗を発表しあう、社内表彰会のようなイベントなのですが、これがスゴイ。

成果といっても数字だけではありません。セールスなら「こんな有名企業に契約していただきました!」、カスタマーサクセスなら「お客様からこんなうれしい言葉をいただきました!」、開発なら「プロダクトにこんな凄い機能を追加しました!」というように、良かったこと、喜ばれたことを次々にプレゼンしていくんです。といっても堅苦しい雰囲気ではなく、お菓子を食べたりお酒を飲みながら。

真面目で落ち着いた社員が多く、“大人のスタートアップ” とも呼ばれるHolmesですが、このときばかりは雰囲気が違うんです。

まず、自由参加なのに当然のように全員が出席する。しかもモチベーションの高さが半端ない。目標未達の社員には愛のあるヤジや茶々を入れたりするんですが、普段は物静かな社員もガンガンいく。

反対に、目標達成やお客様に喜ばれたエピソードを発表した部署には、ノーベル賞クラスの偉業を達成したのかっていうくらい、全員が全力で褒めまくるんです。おまけに褒められた方は本気でドヤるからどんどん盛り上がる(笑)。毎回、熱狂の渦に巻き込まれるんです。

転職を即決する参加者も

自分は最初、ちょっと照れ臭い気持ちもありましたが(笑)、実際に参加してみると変わりましたね。

社員数も50人を超え、東京以外に長野と福岡に拠点があります。そうすると、どうしてもコミュニケーションの密度が薄くなります。ただ、Winパーティーという機会があることで、自分が気づかないところでみんな目標に向かって頑張っていることが分かる。大人になると本気で褒め合うことはなかなかないので、褒められて喜んでいる顔を見るのも、自分が褒められるのもめちゃくちゃ嬉しいんです。

最後に投票でMVW(=Most Valuable Winner)を決めるんですが、いまでは毎回本気で狙っていますね。票が入らなければ真剣に落ち込みます(笑)。だから普段の仕事にも力が入る。

何よりWINパーティーを通して、初めて「カルチャーのパワーってスゴイな」「こんなに仕事に影響を与えるものなんだな」って実感できましたし、Holmes社員がOKRにたいして意識の高い理由や、全力で承認しあうことの大切さが納得できました。

じつはこのパーティーは、Holmes転職希望者にも参加してもらうことがあるんです。皆さん、最初は私とおなじくギャップにびっくりされますが(笑)、徐々に惹き込まれていって、その場で転職を決めた方もいるんですよ。

おわりに

自分自身の転職から学んだ、SaaSスタートアップにおけるミッションとカルチャーの大切さをお話しさせていただきました。

全員でひとつの目標に向かって力を合わせるのがSaaSスタートアップのスタイル。企業選びにおいても、実際にも働くうえでも、ミッションに対する共感とカルチャーフィットは、ある意味で勤務条件やスキル・経験よりも重要だと思います。とくに私と同じように、異業界・異業種出身の方にとっては尚更かもしれません。

SaaSスタートアップへの転職を考えている方は、ぜひ事前に社員に会ってミッションについて詳しく聞いたり、交流会などに参加してカルチャーを体験したりすることをおすすめします!


酒井 貴徳(さかい・たかのり)
2007年に東京大学法学部、2009年に東京大学法科大学院を卒業後、2010年に弁護士登録。2011年から西村あさひ法律事務所にて主にM&A案件・スタートアップ法務に従事。2018年にUniversity fo Virginia School of Law (LL.M.)を修了後、同年9月よりニューヨークのDebevoise & Plimpton LLPにて勤務。2019年にニューヨーク州弁護士登録。同年9月より株式会社Holmesに参画。現在はCEO室室長。

(編集=ALL STAR SAAS FUND 撮影=原かおり)

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